しくみずむ

様々な分野の身近な小さなことから、大規模なことまで、仕組み、原理についてつづっていきます。みなさんの知的好奇心をくすぐっていきます。

点ではなく、線で。

はじめに

 今から7,8年くらい前からデザイン思考という概念が浸透し始めていたらしく、聞いたことはあったものの、結局なんのことかさっぱりわからない状態だったので、ティムブラウンの著書『デザイン思考が世界を変える』を片手にデザイン思考とは何かについて考えてみました。

 

デザイン思考って?

 まず結論から。

 

 デザイン思考を一言で言えば「点ではなく線で考えよう」に尽きるのではないかと思います。プロダクト単体としての点で考えるのではなく、プロダクトをあくまでも一つの要素とし、それ以外の全体の流れをしっかりと考える。そうすることで、流れ全体として問題を解決するためのアプローチが思いつく、ということです。

 あるプロダクトやサービスを考える際に、そのプロダクトで何を実現させるかを話す前に、ある目的を達成するために、ユーザーはどのような体験をしてきていて、どのような気持ちなのか考え、その上で自分たちが提供したいプロダクトはどのような立ち位置であるのかを理解することが非常に大事だということです。

 

別に新しくない?

 

 もうデザイン思考自体が概念として社会に広まってきているためか、正直この部分関しては知識としては目新しいものではなく、仕組みを考える上で部分だけではなく全体から考えるというのは当たり前のことのように思います。

 一方で、わかっていてもできないことが多いのが実際問題だと思います。それは、個人の問題としての問題と、組織としての問題があると思います。

 個人としての問題とは、目の前の問題にとらわれすぎてしまい、全体に目を向けることができなくなっている状態に陥ることです。いわば木を見て森を見ず状態。この状態から回避するためには、一度俯瞰することが大事だと思います。俯瞰するというのは、抽象度を高めるということです。百貨店の売り上げについて考えているのであれば、小売業界全体について考えてみる、マグロについて考えているのであれば、魚について考えてみる、といった具合です。そうすることで、全体としての部分の立ち位置、または部分同士の繋がりが見えてくるようになるはずです。

 

 もう一つの組織の問題は、個人がプロジェクトのある特定の部分しか担当する必要がない場合に起こります。他の部分は自分に関係がないのだから、自分の担当部分だけをやっておけばいいという思考を助長し、結果的に全体として整合性が取れず、ストーリーとしてチグハグな状態が出来上がってしまいます。組織として、プロジェクトとして大きくなるほど難しくなっていく問題です。ここへの対策として、ティムブラウンは異分野の専門家複数で小さなチームを作成することを提案しています。心理学、エスノグラフィー、エンジニア、ビジネス...。それぞれの専門家が一つの問題に対してそれぞれの領域からアプローチしていくことで、本質的な問題解決に繋げようということです。

 この考え方は今後より重要になっていくはずであり、単に専門領域を持つだけでなく、他の領域に対しても寛容であること、理解をすることが必要だと思います。

 

おわりに

 実際にデザイン思考をざっと学んで思ったことは、これまでの考え方を改めなければいけないということです。

 デカルト以後の近代の考え方は、問題は細分化することで解決されるというものでした。しかし、今日に入り、問題自体が様々な原因により複雑に絡み合い、専門領域も多岐に渡っている中で、本当に細分化すれば問題は解決できるのでしょうか。あちらを立てればこちらが立たず状態に陥ってしまいがちなのではないでしょうか。

 これからはティムが提唱するように、一つの問題に対してあらゆる専門領域を持つ人々が協力し、解決をしていくことがより一層重大だと思います。

 読者の皆さんは、どう思いますか?